わたしのところに訪れてきたのは小池さんという32歳のフリーター。元アメフト選手らしくてがっしりした身体の方で起業準備のために1年前に会社をやめたとのこと。インターネット上で、飲食店の割引サービスの運営(いわゆる“ぐるナビ”みたいなもの)をやりたい、ということなのだが、思ったより起業準備は進まず、お金も足りなくなって、ちょこちょこアルバイトをして生計を立てているらしい。いわゆるフリーターである。で、起業のために300万円の資金を調達したい、とのこと。
開業資金

 
わたし 「保証人はありますか?」

 
小池さん「いいえ ありません」

 
わたし 「担保になるものはありますか?」

 
小池さん「いいえ ありません」

 
わたし 「そうですか それはしかたないですね〜

 では、自己資金はどれくらいありますか?」

 
小池さん「そうですねぇ〜 口座に3万円くらいかなぁ」

 
わたし 「えっ? 300万円借りるのに自己資金が3万円     ?」

 
これではどうしようもない。開業資金として300万円を調達したい、というのは決して多い額とは思わないが、それでも自己資金が3万円。 これではまず貸してくれるところはない。「担保になるものを持っている」という状態、なんて人は滅多にいないので、それがないのはしかたないが、保証人あるいは自己資金のどちらかはないと話にならない。


小池さんは「そうですかぁ どうしてもだめですかぁ〜」
 
と言いながらも、「事業計画書を作るのだけ手伝ってほしい」ということでA4で10ページにも及ぶものを作る手伝いはした。今回はこれを提出しても極めて可能性が薄いことを承知の上だったが、長い目でみて、開業する際に役に立てれば、という思いであった。

 
仮に、高利の消費者金融から借りるにしたって、フリーターでは絶対貸さない 2ヶ月後久々に電話がかかってきた



小池さん「桑山さん、400万円借りれました!!!」


 
桑山  とっさに「親御さんからですか?」

 
小池さん「いいえ、親は普通のサラリーマンで定年まで勤め     上げた人なんで、事業をやるなんてことにはまっ     たく理解がないので絶対貸してくれませんよ。
        ○○信用金庫からです」

 
桑山  「えっ? っていうことは、しっかりした保証人が     用意できたんですね?」

 
小池さん「いいえ、前にも言ったように、親は保証人には絶     対なってくれないし、親戚に保証人になってもら     う、なんて言ったら親は発狂しちゃいますよ。

 桑山  「じゃあどうして借りられたんですか?」

小池さん 「えっ?忘れたんですか。桑山さんが信金がいい     って教えてくれたんじゃないですかぁ!」

たしかに
「開業時でも、地方銀行や信用金庫から稀に無担保無保証で 借りれる場合があ
るので、片っ端から当たったら可能性は 出てくるかもしれませんねぇ〜」

とは言った覚えはある。

「だからダメもとで当たってみればどうか」

と、続けたのもはっきり思い出してきた。

しかし、本当に可能性があると思ってそういうことを言ったのではない。

小池さんが資金調達で何とか方法はないのか、となかなか帰ろうとせず、粘りに粘ってきたので「もう手はありません」とは言いづらく、まさに「気休め」で言ったにすぎなかった。(われながら、何といういいかげんなコンサルタント・・・)

たしかに地銀や信用金庫のホームページには、「当行とお取引が今までまったくなくても無担保無保証で500万円まで借り入れ可能」なんて記されているものも、あるにはあるのだが、実際はそれで借りれた、なんて話はわたしは聞いたことがない。

ましてフリーターなんぞに開業資金なんて貸すことなんてありえない。いや、そう思うのは、決して私だけではないだろう。

「コンサルタント」と名前がつく人100人に 聞いたら100人とも同じことを間違いなく言うであろう。「現状では絶対無理です」と。

しかし、それからがこの小池さんは凄かった。信用金庫と地方銀行に片っ端からあたることなんと全16行、一つずつつぶしていって、16行目でやっと借りれたらしい。もちろん、わたしが手伝った事業計画書を、片っ端からあたっていった銀行の融資担当者の話をもとに徐々に改善あるいは付け加えていったことも大きかったようだ。
開業資金
わたしが手伝った時はA4で10枚程度だったのが、最終で借りれた事業計画書を見ると30枚くらいに膨れ上がっていた。
えっ?銀行の融資担当者は普通はこんな分厚いのは読まないのになぁ〜と思いながら、「いやぁ〜 本当にありがとうございました。」と深々としたお礼までされて感謝されてしまったが、こちらがえらく恐縮してしまった。

こちらがほとんど見捨てて、しかもいいかげんなことを言って感謝されたのは初めてだからだ。

「そんな奇跡的な事例を教えてもらって本当にありがとうございました!」と言いたいのはこちらの方だった。

しかし、執念でどうにかなることもあるんだなぁ〜

のちのち聞いたら、その信用金庫始まって以来の「フリーターに貸した事例」だったらしい。小池さんが電話で問い合わせた時に出てくれた○○信用金庫の担当者が、たまたま「無担保無保証で自己資金がまったくなくても、事業のアイデアが斬新で事業計画がしっかりしているところを支援したい。それが金融機関の本来の使命なんだ!」と強烈に思っている人(本当に希少価値)だったらしい。

だから事業計画書30ページでも逐一読んで、面接で事細かに小池さんに質問していったとのこと。

これはただのラッキー? 確かにそういう面もあるでしょう。しかし、16行も当たったから、その結果「良い担当者」にぶち当たった、とわたしは思う。

「運は動きまくらないとめぐってこない」ってことでしょうか。


ポイント!


資金調達はいろんなことを片っ端から当たってみないと  わからない。行動量が「運」を呼び込む


  ■事業計画書をとことん説得力あるように書くのが肝要

フリーターが信用金庫から400万円のプロパー融資に成功




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